新たなる道



 「事情は、何となく分かりましたけど。それで、何故私はここで暮らすことになるんですか?」
 「あんたの力の質のせいかな」
 「質ですか?」
 「普通なら、自らの力を行使して結界を張ったり、悪さをしてくる奴に攻撃出来たりが可能なんだ。
  しかし、あんたの力は特殊でね。出来る事といったら、他人に力を分け与えてその人間の能力を向上させたり、集まってくる悪霊を無意識に浄化することのみ」
 「つまり、お札とかパワーストーンとかそんな感じですか?」
 「そうだ。だからこそ、体内で循環がうまくいかないという事態が起きるわけだ。だから、あんたはこのままここに残ってこの会社の社員として働いてもらう。
  その代わりに私たちが責任もって預かるということになったんだ。それに、家出中の方が体に負担はかかっていなかっただろう?」
 「…………確かに」
 「ただ、一人で住まわせると性質の悪いのが寄ってくることになる。だが、この寮に入れば安全だ。私や雅、それに保もいるしね」
 「なるほど。…………でも、よく家族が許しましたね。特にあの2人が」

 小夜は、故郷の父と兄を思い出す。あの極度の過保護者達がよく許したと思う。本来なら、兄の無実が証明された時点でもっと騒ぎになっていたはずだ。

 「あぁ、それは雅が説得した。あんたの家族とは面識があるし、体についても説明したらしょうがないってさ。ただ、一度荷物を取りに帰ってこいとさ」
 「え…………、嫌だな。それは…………」
 「駄目ですよ、お嬢。ケジメはきちんとつけませんと」
 「じゃあ、保も一緒に来なさいよ。そういう自分だってケジメつけないと」
 「そんな、一度家を出た男がそんな真似出来るわけ…………」
 「保。あんたも行くんだよ。きちんと兄貴と話をつけてきな」
 「…………………うっす」

 緋乃の言葉に保は、うなだれた。その隣で小夜も溜息をつく。

 まぁ、こっちで働けることが決まっているなら軟禁されることだけはないから、まだましか。



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