夢
いつの頃からか私は不思議な夢を見るようになった。
その夢はいつも同じで出てくる人も一緒。だけど、その人の顔を見ることは一度もない。
何故か顔だけが見えないのだ。
夢の内容はというと臨終間際の私を男の人が抱きしめる、ただそれだけ。
小さい頃は、その夢を見るたびに泣いていた。
何故だかむしょうに悲しくて、胸がしめつけられるような感じがしたから。
でも、大きくなるにつれてその悲しみにはわずかながら抱きしめる男への怒りが混ざっていることに気がついた。
イマサラナンナノ? アナタハカッテヨ。イイカゲンニシテチョウダイ。
その怒りの理由は、男の浮気だろうか?
まぁ、何にせよ。あんまり見ていて楽しい夢でないことは確かだ。
そんな夢を見るくらいなら宝クジでも当たる夢を見させてくれたほうが何倍もいい。
夢の中でくらい楽しい思いをさせてくれと願うのは、いけないこと?
ううん、願ってもいいはずだ。
もし神様がいるとしたら(いるはずないけど)、どうか今夜はいい夢みさせてね?
そんな事を願ったのがいけなかったのだろうか。
まさか、あの夢にそんな意味があるなんてこの時の私には想像出来なかった。
そして自分の身を守る戦いの日々が幕を開けることも。
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