再会



 「何ではこっちのセリフですよ。家出ってどういうことです!!」

 保は、小夜の両肩を掴み睨みつけてきた。
 しかし、睨みつけられた小夜は怯むことなく、負けずに怒鳴り返す。

 「うるさいわね。こっちにだって色々事情ってものがあるのよ」
 「親父さんがどんなに心配しているかちゃんと分かってるんですか?」
 「背に腹は代えられないのよ。あんたこそ、パパに心配かけておいて何なのよ。え?」
 「そっ、それは…………。って、俺とお嬢じゃ違います。自分の体のこと分かってるでしょう?」
 「大丈夫よ。今まで何ともなかったし。昔に比べれば丈夫になりました」

 小夜はつんと顔を背ける。しかし、その行動が保の怒りを更に煽った。

 「親父さんに連絡しますからちゃんと家に帰って下さい」
 「駄目よ! 何考えてるわけ? あそこに居たくないからここにいるんじゃないのよ。
    そんなことも分からないわけ?」

 今度は小夜が保の腕を掴み、必死に電話を掛けるのを阻止する。

 「放してください!」
 「いーやーよー。絶対に放さない!」
 「あんた達いい加減におし! 保もお嬢さんを興奮させるんじゃないわよ」

 そう言って二人の争いに介入してきたのは、肩までの赤茶の髪を巻き、
 その豊満な体のラインを強調した黒いミニのワンピースに白衣を身にまとった艶っぽい美女。
 小夜は、思わずポカンと見惚れてしまう。その隙に美女は、小夜の顔色や脈を確認していく。

 「うん、もう大丈夫だね。あんまり無理するんじゃないよ」
 「はい。ご迷惑をおかけしました」
 「さすが館林のお嬢さん。ちゃんと躾けられているねぇ。この馬鹿とは大違い」
 「緋乃(あけの)さん、ひどいっす」
 「本当のことだろう? それにお嬢さんは、家出の理由があるって言ってるじゃないか。
  まずはそれを聞いてからでいいだろう? もちろん、ちゃんと話してくれるだろう?」
 「…………はい」

 緋乃のするどい眼差しに押された小夜は、体を小さくすくめながら頷いた。

 「じゃあ、皆でお茶でもしながらにしようか?」

 緋乃の介入で2人の争いに収拾がついたのを見て鬼頭は、にこやかにそう提案したのだった。


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